Forever&Ever(11)

日が暮れて、夜が来て。
それはいつもと同じ夜でいて、同時にそうではない夜だった。
臨時の休日など、滅多にないことだった。
突然やってきた非日常を、女王と補佐官はそれぞれに楽しんだわけだが、そのせいか遊びつかれた子どものように、眠そうな顔をしている。
夕食もそこそこに、それぞれの部屋へ引き上げることにした。
「それじゃ、ロザリア。
おやすみなさい。」
お休みを言うには早過ぎる時間であったけれど、金の髪の女王は生あくびをかみ殺すのに苦労しているようだ。
緑の瞳は、半分閉じかけてとろんとしている。
「はい、陛下。
ではまた明日の朝に。」
ロザリアの応えを聞くだけ聞くと、後はだるそうに右手を上げてダイニングを後にした。
軽い会釈をして見送ったロザリアはといえば。
生あくびこそ出なかったが、地の底に引きずり込まれるような疲労感を感じていた。
長い長い午後だった。
そして、その午後の終わりに、彼女に投げかけられた約束。
一方的な約束が、彼女の気分を重くしていた。
「今夜、テラスの鍵はかけないでいてください。
約束しましたよ?」
木漏れ日の揺れるあの木陰で、黒い瞳が押しつけた言葉。
とにかく部屋へ帰らなくては・・。
つい先ほど女王が出て行った扉に向う。
のろのろと、重い足取りで。

ロザリアの部屋は、執務室や女王の私室から少し離れた場所にある。
ドアを開けると、そこはすぐに広々としたリヴィングで、中央にらせん状の階段。
上は書斎とクローゼットになっていた。
リヴィングを抜けるとバスルームに続き、その奥は寝室である。
聖地の部屋とほとんど変わらぬようにと、女王の心遣いが感じられる造りであった。
青いベルベット地のソファに身を投げ出したロザリアは、ふかふかした肘掛に頬杖をついてため息をもらす。
どうしよう・・・。
ぼんやりと視線を投げた先、テラスの窓は開いていた。
「テラスの鍵はかけないでいてください。」
あの約束の言葉。
あそこから彼は来るというのか?
ロザリアにとって現実とは思えない、あの午後の夢の続きをみるために?
続き・・・。
身体が震えた。
いったい自分は何をしようとしているのか。
待つべき人は他にあるはずだ。
その人の訪れを言外に拒み、そして自分は何を待っているのか。
待っている。
ロザリアは自分の中にある、その浅ましい思いにぞっとした。
黒い切れ長の瞳。
あれがいけない。
あの瞳に見つめられて、ロザリアの理性はどうにかしてしまったのだ。
まだ間に合う。
これ以上深入りする前に、はっきりと拒絶する事だ。
月の光がさしこむ窓辺に、ロザリアはゆっくりと近づいて、そして重い真鍮の飾り錠に手をかけた。
「ひどいことを・・・・。
そんなに僕がお嫌いですか?」
背中から静かな声がする。
飛びあがらんばかりの衝撃を、ロザリアはかろうじて抑えていた。

「良かった。
危ないところでしたね。」
さらに間近になった声には、恨みがましい響きがあった。
「あなたのお気持ちが変わるのではないか。
そればかりを、ずっと心配していました。
あのままお連れしなかったことを、あの後、僕がどんなに後悔したか。
あなたには、おわかりにならないでしょう。」
振り返る事もできない。
今振り返れば、きっとまた捕まってしまう。
冷静でいられる今のうちに、彼女には言ってしまわなければならない言葉があった。
「ティムカ・・・。
わたくしは、来ても良いとは言わなかったはずだわ。
以前言ったわね?
わたくしはあなたに応えてさしあげられない。
何度も同じことを言わせる子、わたくしは嫌いよ?」
意識して彼を子どもと呼んだ。
彼は弟のようなかわいい存在。
そう思いこもうとした。
そうしてその呪縛に捕まらないですむように、ロザリアは自分自身に護符を貼る。
「たしかに・・・、来ても良いとはおっしゃらなかった。
けれどだめだとも、おっしゃいませんでしたよ?
それは良いということです。
僕は、そう教えられました。」
背中からまわされた腕が、やわらかくロザリアを抱き寄せる。
耳元でかすれる抑えた声。
続いてしめやかな唇の感触が、首筋を這いおりてゆく。
「あなたが好きです。
だから・・・、もう僕は誰にも遠慮はしませんよ。
ずっとずっと思い続けた僕の・・・。
あなたは僕のものですから。」
甘い熱いささやきが、しっかりと貼りつけた護符を、じわりじわりとはがし始める。
「ティムカ、やめなさい。
わたくしは、あなたが・・。」
必死に抗うロザリアの言葉は、弱く震えている。
「僕が?
僕が嫌い?
そんなことは許しませんよ。
好きになっていただきます。
必ず・・。」
冷たい指が彼女の顎をとらえ強い力で上向かせると、すぐさま唇が重ねられた。
腰にまわされた腕はさらに強くロザリアを縛り上げ、ほとんど息をもつかせぬ激しいくちづけ。
身動き一つできぬ戒めの中で、必死の抗議を視線にこめた。
なじるような青い瞳が、覆い被さる褐色の肌の男を見つめる。
男はにっこりと微笑して、さらに彼女の唇を深く深くむさぼった。

 

Forever&Ever(12)には多少の大人向け表現を含みます。
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