Die Station ~ die zu Heaven fortsetzt~(8)

 

夕暮れの聖地。
やけに赤い陽があたりをロゼ色に染め上げる中、ロザリアは必死で探した。
赤いリボン。
あの後、彼女の聖地入りを追いかけるように知らされた彼の婚約は、ロザリアをさらに打ちのめした。
それなのに、まだ彼女はこうして探している。
「聖地に参りましたら、こちらとは無縁の日々ですわ。」
あの夜の強がりは、本当に強がりでしかなかったことを思い知らされる。
平然とその凶報を受けながら、泣くこともできず、思い出のリボンを捨てることもできない。
「探しものか?」
不意にかけられた低い声に、びくりとした。

この声。
先ほど別れたばかりの、炎の守護聖だとすぐに気づいたが、心の奥の映像をのぞかれたような気がして、振り向くこともできない。
無言でうつむくばかりのロザリアの背に、足音が近づく。
「どうした?」
気遣わしげな声が続く。
すぐ傍で。
彼女の肩ごしに。
「なんでもありませんわ。」
ようやく声が出た。
目を閉じて息を整え、立ち上がる。
「オスカー様こそ、どうかなさいまして?
お屋敷はこちらではございませんでしょう?」
なんとか微笑を作ったはずだ。
つけてきたのかと詰ってやりたい気持ちはあったが、この際これ以上の皮肉を口にすれば、微笑を保つことはできそうもない。
ロザリアの軽い皮肉に、男はほんの少しだけ苦笑して、それからぐいと彼女の傍につめよった。
覗き込む。
氷の色の瞳が、探るようにロザリアの青い瞳をうかがった。
「なんでもない…か。
嘘が下手だな。」
見下ろす氷の色の視線を、ロザリアははね返す。
どうしてこの男は、こうも傲慢なのだろう。
胸の奥の思いに、素手で触れられたような気がした。
見せたくはない思い、触れられたくはない思い。
この男に触れてよいと許した覚えはない。
「たとえ嘘であったとしても、オスカー様には関わりのないことですわ。」
儀礼上の微笑さえなく、素のままの怒りを全開にした。
「ほうっておいて…。」
さらに激しい言葉を投げつけようとした矢先。
「君の探し物じゃないのか?」
赤い幅広のリボン。
オスカーの差し出した手に。
「そ…れ…。
どうしてオスカー様が…。」
男の指から受け取って、胸に抱きしめる。
そっと。
「ありがとうございました。」
再び視線を上げて驚いた。
男の氷の瞳が、不機嫌に見えたから。
「探し物はみつかったか。
良かったな。」
言葉つきにもとげがある。
「オスカー様?」
いぶかしげに問いかける彼女に、男はくるりと背を向けた。
「じゃあな。」
そのまま男は振り返ることもせず、聖殿へ続く道を戻っていった。