リベンジ・オブ・ダークネス

○月○日月の曜日晴れ  

ジュリアスにも困ったものだ。  
・・・。  
説教はいい。  
職務怠慢だとか、厳罰に処すぞとか、まあそのくらいは聞いてやらぬでもない。  
あれは説教が唯一の楽しみ。  
長い時を生き抜く、あれのリクリエーションのようなものだからな。  
そのくらいの余裕は持ってやろう。  
なんといってもあれと私は昔馴染み。  
気に染まぬ相手ではあるが、同じ時間を共有してきた唯一の人間だから・・な。  
だが・・・。  
ことがあの天使のこととなれば、そうもいかぬ。  
あの金の髪の天使は、あれが手に入れるべきものではない。  
天使が女王候補を降りた。  
あれのために・・。  
放ってはおけぬ。  
このままでは・・・。  
 

○月●日火の曜日晴れ  

 金の髪の私の天使はあれにたぶらかされたのだ。  
あれの生真面目さが美徳だと、幼い天使は思っているに違いない。  
ふ・・・。  
男の魅力とはそんな簡単なものではない。  
生真面目さは重荷になるものだ。  
そんなことも知らない私の天使。  
このままあれに渡すわけにはゆかぬ・・な。  
ともあれ、あまり時間がない。  
悠長に構えていては、私の天使が不幸になるのだ。  
それだけは避けてやらねばならぬ。  
天使の泣き顔など、見たくはないからな。  
さて、どうしたものか。  
 

○月▲日水の曜日晴れ  

まずい・・な。  
今週末にはあれが私の天使を娶るという。  
大体あれは趣味が悪い。  
いや、私の天使を選んだことがではない。  
あれの金の髪と、天使の金の髪のバランスのことだ。  
最近ルヴァが凝っている妙な宗教の仏壇のようではないか。  
キンキラキン・・だ。  
金は漆黒の隣りでこそ、美しさを増すというもの。  
金モールも、その地が黒でこそ華やかで美しい。  
あれは昔から美的感覚に欠けるところがあったが、この年になっても治らぬと見える・・な。  
わからぬ奴。  
金の髪の天使は私のものなのだ。  
それにしてもどうしたものか・・。  
 

○月△日木の曜日晴れ  

ふ・・・。  
策はあった・・な。  
まあ、良い。  
これでなんとかなるだろう。  
そのためには眠っておかねばなるまい。  
今週中にといわれた職務があったような気がするが、かまうことはない。  
天使の幸福のためだ。  
ただの惰眠ではない。  
明日の夜まで眠ることにする。  
けっして私を起こしてはならぬ。  
誰も・・・だ。  
 

○月■日金の曜日晴れ  

身体にサクリアが満ちている。  
十分だ・・な。  
今夜はあれが天使を娶る夜。  
華々しい式を挙げぬ代わりに、この週末を二人で過ごすのだとか。  
ふ・・・。  
そう、うまくゆくと思っているのか。  
甘い・・な。  
あれのサクリアは私のサクリアと対極にあるものだ。  
少々の力ではあれに影響を与えることはできぬ。  
だが・・・。  
一点集中でサクリアを送れば・・。  
あれとて抗うことはできぬ。  
この週末の三晩。  
新婚の夢の代わりに、安らぎを与えてやろう。  
一点集中で・・な。  
天使はさぞ悲しむことだろうが、それで天使の目が覚めてくれるなら、一時の悲しみも仕方あるまい。  
ふ・・。  
私から金の髪の天使を奪うことができるかどうか。  
この身体に満ちた闇のサクリアに抗えるか・・。  
ジュリアスよ、試してみるが良い。  
 
 

<ジュリアスの私邸・アンジェリークの独白>  
ジュリアス様はどうなさったのかしら。  
今夜でもう休暇は終わってしまうというのに。  
最初の夜から変だったわよね。  
私だって覚悟くらいしてたんだけどな。  
なんの覚悟かって?  
やだ、恥ずかしいな~。  
オリヴィエさまにみたてていただいたナイトガウンも、下着も、そりゃかわいくって気に入ってたのにな。  
ジュリアス様はお気に召さなかったのかなあ。  
ううん、そんなことはないわね。  
だって途中まではすっごくいいムードだったもの。  
ジュリアス様は、ベッドルームで私をそっと抱きしめて・・。  
きゃあ、恥ずかしい!  
でも、突然よ。  
本当に突然おっしゃるの。  
「今宵は気分が優れぬ。おまえも疲れていることだろう。このまま休むことにしよう。」  
顔をしかめてそんな風に。  
変よね。  
これって変だわ!  
新婚なのよ。  
新婚の初夜よ!  
(きゃ~~!!)  
でもそれからずっとその調子。  
私は今夜も一人で眠るんだわ。  
ジュリアス様、本当に私のことお好きなのかしら?  
なんだか不安になってきたわ。  
 

<同時刻、ジュリアスの私邸。ジュリアスの独白>  
おかしい。  
何故だ!  
わたしはアンジェリークを愛している。  
それなのに何故だ?  
彼女をその・・、・・しようとした瞬間に、私の身体は私を裏切る。  
何故だ?  
私は・・、もしや、どこかおかしいのか。  
このままではいずれ彼女にも不審に思われる。  
どうしたら良いのか。  
このようなこと、誰に相談できるというのか。  
どうすれば良い!  
誰か教えてくれぬものか!  
 

<水晶球が映す苦悩の新婚カップルを、薄い笑いを浮かべて眺めるクラヴィス。>  
ふ・・・。  
気づかぬか?  
気づかぬであろうな。  
ジュリアスよ、悪いがおまえに天使は渡さぬ。  
さて、この先は・・・。  
ふ・・。  
私の出番だ・・な。  
 

<翌日の聖殿、廊下にて>  
A:アンジェリークC:クラヴィス  

C「どうした・・。浮かぬ顔だ・・な。新婚の花嫁のものとも思えぬ。」  
A「クラヴィスさま・・。」  
C「・・・。何か、あったのか?」  
A「あった・・?いいえ、なんにもありません。本当になんにも・・。」  
C「泣いているの・・か?話してみるか、私に?聞いてやることくらいしかできぬであろうが、気は楽になる。」  
A「ありがとうございます。クラヴィスさま、なんだか今日はお優しいんですね。」  
C「ふ・・・。そう・・か。」  
 

この後私は、彼女を我が屋敷へ連れ帰る。  
無論、約束どおり彼女の涙のわけは聞いてやろう。  
だがその後は・・・。  
ふ・・。  
私の天使。  
金の髪の私の天使。  
今宵こそ、この呼称で彼女を呼ぶことができるだろう。  
なんと・・、美しい夜になることか。  
楽しみだ・・な。