幸福への回帰(6)
「申し訳ございません、陛下。」
一緒に謝罪すると聞かないオスカーを、なんとか押しとどめたロザリアは、友人である女王に、約束を反故にする許しを請うた。
何を言われても、甘んじて受けるつもりであった。
言ってみれば、男のために、義務と責任を放棄しようというのだ。
どんな罵倒も、当然だと思う。
ところが女王は、にっこり笑ってロザリアの手をとった。
「良かったわね、ロザリア。
わたしも嬉しいわ。」
戸惑わずにはいられなかった。
なぜ責めない?
嘘つきと、ひどいと責めないのか。
「ここで私とロザリア、ずっといっしょにいたとしてよ?
私の力がつきなきゃ、下界には降りられないのよ。
その時、知ってる人なんて誰もいないの。
ただの一人もよ?
だってみ~んな、とっくにいなくなってるもの。」
何を言い出したものかと、ロザリアは女王のよく動く口元をただじっと見ている。
「それでも私は元々庶民の出だから、適当に恋をしてお嫁にいっちゃうことだってあると思うのよ。
だけどロザリアは、お嬢様の上に真面目、ううん不器用だから。
絶対とは言えないけど、かなりの確率で無理でしょ?
ロザリアの眼鏡にかなう人が、そうそう簡単に見つかるとは思えないもの。」
候補時代を彷彿とさせるあけすけな物言いをする女王に、さすがにロザリアも抗議の声をあげた。
「陛下、それはあんまりですわ。」
「だからね、ロザリア。
気にしないで行っていいの。
よく考えてみて?
ここで一緒に居続けて下界に降りても、いつか別れる日がくるの。
だったらそれが今じゃ、どうしていけないの?」
ロザリアの顔をのぞき込む緑の瞳。
「ね、行って。
お願いよ、ロザリア。」
喉に塊がこみあげて、声にならなかった。
「ありがとう、アンジェリーク…。」
振り絞るようにして出した声は、とてもロザリアらしくない、幼い声だった。