Mil ~千の夜に~

既に辺りはすっかり寝静まり、葉擦れの音さえ止んだ深夜、闇の中。

右肩にかかる愛しい重みを、もう一度抱きなおして、ジュリアスは小さなため息をつく。

すうすうと規則正しい寝息が、ジュリアスの肩口をくすぐっている。
そのかそけき甘い息がかかる度、ようやく抑えた身内の激情に火がつくようで、先ほどから幾度同じため息をついたことだろう。

つい先ほどまで、あえかな声をあげて彼に応えた愛しい娘。
ただ一度の彼の情熱を受け止めただけで、すとんと眠りに落ちてしまった。
身内にくすぶる残りの熱が、今すぐにでも彼女を求めてやまないというのに。

「なんと無邪気で、酷な娘か……。」

苦笑混じりの恨み言は、本心であった。
それでも、長い睫毛を伏せてすっかり安心しきった様子で眠る彼女を見れば、ジュリアスの青い瞳は優しくなった。

明日、また明日がある。

こうして二人、同じ館に住まうようになったのだから。

ひとつ大きく息を吐いて、ジュリアスは彼女をそっと抱き寄せた。
そうして彼は、艶のある滑らかな髪に口付けて言った。

「良い。
今宵は許してやろう。
愛しいロザリア。」

そしてその滑らかな頬に唇を落として、さらに続けた。

「だが明日の夜には……。
手加減はせぬ。」

笑いを含んだテノールが、しっとりとした闇に甘く融けていった。