蒼の蜃気楼(7)
穏やかな陽光に包まれた聖地。
緩やかな時間の流れは人ならぬ身となった守護聖の心を守り、下界で過ぎゆく年月の速さを忘れさせてくれる。
ある日の遅い午後、女王補佐官の茶会に参加したオリヴィエは、そこで女王交代を知らされた。
彼らの宇宙の衰退は予想以上の速度で進んでいるらしく、それがゆえに次期女王候補の選出も急がれたらしい。
「間もなくここに着くだろう。
明日にも、皆に引き会わせよう。」
主座の守護聖の言ったとおり、翌日二人の少女が宮殿に現れた。
金の髪、大きな緑の瞳の愛らしい少女。
自分の名はアンジェリークだと名乗った。
だがオリヴィエの視線は、彼女の隣、まっすぐに視線をそらすこともしない、今一人の少女に釘付けであった。
印象的な蒼い瞳。
忘れるはずもない、あの瞳。
星々の煌めきをそのまま映したようなあの瞳が、他の少女のものであるはずもない。
「ロザリア……。」
思わず名を呼んだ。
するとその少女は、至極自然に、
「はい。」
と返事をする。
極上の微笑を添えて。
「不思議ですわ。
お目にかかったことなどないはずですのに……。
なんだか……とても……。」
薄い磁器のティーカップを渡しながら、オリヴィエは愛しげに笑って見せる。
「とても……?
愛しい……と思った?」
「そ……!
そんなこと……、初めてお目にかかった殿方に……。」
真っ赤になって抗う愛しい少女を、さらに追い詰める。
「初めてじゃないさ。
あんたが忘れているだけで……ね。」
どれほどの時間を待ったと思う。
きっと会えると、それだけを信じて長い時間をただ待った。
この上は、もう待つことなどしない。
この宇宙の未来がどうなろうと、知ったことではない。
にぎやかな人の輪に混じる彼女の背を見つめて、オリヴィエは微笑する。
いつか彼女が歌ったとおり、その先にある幸せを今度こそ捕まえる。
「もう……待たない。
待って上げられないよ、ロザリア。」
きっと、遠くない未来に。