Eine Rückkehr ~帰郷~
パラパラパラ…。
スレード葺きの屋根が鳴る。
時折混じる一際大きな音が、なんとも無粋で神経に障った。
薄汚れて濁った色の塊は、雨にも雪にもなれない半端もの。
いっそ雨なり雪なり、はっきりすれば良いと、その中途半端さにいらいらした。
森をすっかり覆うように垂れ込めた鉛色の空はどんよりと重く、ただでさえ陰鬱なこの惑星の冬をさらに憂鬱に見せている。
見飽きるほど見慣れたその光景が、オリヴィエは嫌いだった。
この惑星の外には、いつも明るい陽のさす場所があるというのに。
ここで生まれて育ったことは、何もオリヴィエが好んで選んだわけではない。
明るい陽のさす、どこかの惑星で、いつかオリヴィエは暮らすのだ。
重苦しい野暮な毛皮も、何度もほどいて使いまわしたセーターも、長靴も、すべてそこでは脱ぎ捨てて。
「食事よ、オリヴィエ。」
夕食を知らせる母の声。
それさえもうっとおしいと、オリヴィエは思っていた。
純朴で実直な父と、従順な母。
この惑星に生まれ、ここで生きて死ぬことを当然だと疑いもしない両親が、疎ましかった。
よそには、ここと違う、何もかも違う、刺激的な世界がきっとあるにちがいないのに。
そんなことを考える息子を、彼らは偏屈だと決め付けた。
もっと真面目に地道に生きるように、機会あるたび言って聞かせた。
けれどそれが無駄だと知った時、彼らは息子をまるで異種族でも見るように恐れ気味悪がり、最後には腫れ物に触れるように扱った。
それが嫌だった。
理解できない息子を、できるだけ遠ざけようとするくせに、それでも仲の良い親子のふりをする両親が、オリヴィエにはなにより嫌だった。
〈出て行かなきゃね。
ここにはいられない。〉
16 歳の春を待って、オリヴィエは故郷を後にした。
それきり。
オリヴィエは故郷に戻っていない。
家を出た翌春、聖地に召還された。
夢の守護聖として。