Chamade(1)
光の速度を超える航行で、それでも3日かかった。
ごつごつとした赤い岩山の目立つ惑星にたどり着いた宇宙船は、白く優美な流線型をしていた。
船首には、輝く神鳥の金色の紋章が刻まれている。
「オリヴィエ様、ここは我々にお任せください。
必ずお連れしますから。
どうかお願いです。
ここでお待ちを。」
夢の守護聖付きの首席補佐官が、泣きそうな顔をして言った。
「治安もよくありません。
なにかあったら…。」
すがりつく補佐官の腕を押しやって、オリヴィエは出口へ向かう。
ごく小さなうなりをあげて、タラップが降りる。
振り返って、オリヴィエは微笑んだ。
「なにかあっても、かまやしないよ。
次が見つかったんだからね。」
次期の夢の守護聖が、この惑星にいる。
その知らせが聖地にもたらされた時、オリヴィエは迷うことなく迎えのパーティに加わった。
待ちかねた。
この知らせを、どれほど待ったことか。
「はいそうですかって、おとなしく連れて行かせてくれるもんか。
わたしだって、そうだったからね。
あんたたちじゃ、時間がかかりすぎる。
だから行くんだよ。
止めたって、無駄。」
首根っこをひっつかんでも、聖地へ連れて行く。
どうせ逃げられやしないのだ。
時間をかけて説得したとて、同じこと。
あきらめるなら、さっさとそうすることだ。
連れて帰って、必要な引継ぎを済ませて。
そうしたら、行ける。
まだ間に合う。
「行くよ。
もたもたしてたら、置いてくよ。」
イライラとせかすオリヴィエは、いかにも間に合わせらしい生成りのシャツにべージュのパンツ姿である。
目立たぬようにと渡したものであるが、「目立たぬ」とは土台無理な話だったと、補佐官はため息をつく。
やや暗い金色の髪、沈んだ青い瞳の上司を眺めて思う。
何を着ても同じこと。
これほど華やかに美しい青年が、目立たぬはずがない。
「参りましょう、オリヴィエ様。」
あきらめて出口に立った。
この調子では、ターゲットを連れ帰るまでイライラが続くだろう。
上司最後のわがままに、とことん付き合おうと補佐官は決めた。
タラップを降りる彼らの足下に、砂煙が舞い上がる。
乾いた熱い風が、吹き抜けていった。