O ma Rosalia!(1)
(1)
あれはいつのことか。
思い出すこともできないほど、遠い昔のこと。
故郷の惑星は、とうの昔にこの宇宙から姿を消した。
そこにいた人々もみな、惑星とともにいなくなった。
未来とか夢とか希望とか、昔、彼がまだただの人間だった頃に持っていたものは、すべて取り上げられてここに来た。
ふてくされてやさぐれて過ごした日々はいつ終わるとも知れないほどに長く、もう二度と楽しいなんて感情を自分が持つなんて、とても信じられなくなっていたある日のこと。
彼女が現れた。
滅びかけたこの宇宙の、次期の女王候補。
蒼い瞳のとびきりの美少女で、彼がどんなに悪態をついても逃げなかった。
「根性あるじゃねぇか。」
初めてまともにかけた言葉を、よく覚えている。
「当然ですわ。
ゼフェル様の意地悪なんて、かわいいものでしてよ。」
その後彼女は、女子の意地悪がどれほど陰湿で巧妙かを、とくとくと話して聞かせてくれた。
自慢じゃないが、ただの人であった頃から女子とよばれる人種に関わりのまるでない彼には、まさに未知との遭遇で、ただただ目を丸くして聞いていたものだ。
「だからわたくし、筋金入りなんですわ。
意地悪の耐性なら、こちらにおいでのどなたにも、負ける気はいたしませんわ。」
得意げにつんと鼻を上にむけた少女の横顔に、どきんと心臓が跳ね上がる。
<…んだよ。
かわいいじゃねぇか。>
初めての恋。
自覚したら、免疫がないだけに取り繕う事などまるで知らないゼフェルだった。
女王候補である彼女が執務室を訪れるのを、いまかいまかと待ち構える。
ようやく姿が見えたと思ったら、
「よう。
おせぇじゃないか!」
もう少しましな挨拶はできないものか。
わかってはいても、こうとしか言えない。
どぎまぎして一層つんけんしてしまう彼に嫌な顔1つせず、
「まったくゼフェル様は、わかりやすい天邪鬼ですわね。」
ロザリアは笑ってくれた。
「んだよ。
わけのわかんねーこと、言いやがって。」
相も変わらず、乱暴この上ない照れ隠しでごまかしながらも、心の中はぽかぽかと暖かく心地よかった。
ここに居て良い。
このままで良いと言われているようで。
人であることを奪われてから初めて、居場所ができたような気がして嬉しかった。
だから彼女が女王になるのだと聞かされた時、彼は心から喜んだ。
これで離れなくてすむ。
同じ場所で、同じ時間を生きられる。
そう思ったから。
そして女王になった彼女に、思いを告げた。
幸せだった。
これまでの時間は、今こうして彼女とともにあるためにだけあったのだと思えるくらい、とてもとても幸せだった。
懐かしい少年の日を、今、苦い思いでゼフェルは思う。
いつか必ず別れが来ると、思いもしなかったあの頃の、なんと無邪気で幼かったことかと。