幸福への回帰(6)

「申し訳ございません、陛下。」 一緒に謝罪すると聞かないオスカーを、なんとか押しとどめたロザリアは、友人である女王に、約束を反故にする許しを請うた。 何を言われても、甘んじて受けるつもりであった。 言ってみれば、男のため… 幸福への回帰(6) の続きを読む

幸福への回帰(5)

夜半過ぎて、雨はますます酷くなった。 大粒の雨が、庭の木々の葉を派手に鳴らす。 冷めた紅茶を口にして、ロザリアは小さく身震いした。 気温が下がってきたようだ。 窓を閉めようと立ち上がって、息が止まる。 雨に煙った門の前に… 幸福への回帰(5) の続きを読む

幸福への回帰(4)

まっすぐに彼女を見つめてくれる蒼氷色の瞳に、惹かれてゆくのが怖かった。 軽い冗談、彼女をからかういたずら気な笑顔。 ひときわ目立つ赤毛の長身。 その姿を見つけると、ドキリと心臓が跳ね上がるようだった。 恋をしたことのない… 幸福への回帰(4) の続きを読む

幸福への回帰(3)

補佐官の私邸は、聖殿から馬車で10分ほどの距離にあった。 近すぎれば、神経が休まらない。 かと言って、遠すぎれば火急の事態への対応が遅くなる。 私邸を賜ると聞いた時、ロザリアは聖殿のどこか1室をもらえればそれで良いと、女… 幸福への回帰(3) の続きを読む

幸福への回帰(2)

「雨…か。」 石造りのバルコニーに、ぽつりぽつりと水滴のシミができる。 頬に落ちた冷たい雫を指で弾いて、炎の守護聖オスカーは、雨雲の厚く垂れ込める暗い空を見上げた。 送り雨だ。 ひっそりと誰にも告げずにここを去ったあいつ… 幸福への回帰(2) の続きを読む

幸福への回帰 (1)

「大丈夫よ。わたくしがついているわ。」 遠い昔、この世界のすべてを委ねられた友人に、ロザリアは言った。 「本当に? ずっと傍にいてくれるの?」 小刻みに震える小さな背には、既に白い翼があった。 それはこの世界の頂点に立つ… 幸福への回帰 (1) の続きを読む

アナログなロマンス(5)

あれ以来、ゼフェルの機嫌は大層良い。 その良さ加減ときたら、あのこうるさい光の守護聖ジュリアスが 「あの者はいったいどうしたというのだ? 真面目に職務に励んでいるようで、まことに結構なことではあるのだが…。」 と、首を傾… アナログなロマンス(5) の続きを読む

アナログなロマンス(4)

「まぁ…。」 思わず感嘆の声をあげる。 銀色の馬が、そこにいた。 夕暮れの薄闇の中に、鈍く輝く銀色の馬。よく見ると精巧な機械仕掛けの馬のようである。 「ゼフェル様、これ。」 「じきに日が落ちるから。 そしたらこいつに乗せ… アナログなロマンス(4) の続きを読む

アナログなロマンス(3)

「ありがとうございました。 ではわたくし、失礼いたしますわ。」 この日最後の育成の依頼を終えたロザリアは、炎の守護聖オスカーに、丁寧な礼と辞去の挨拶をしていた。 厚いファイルに隠した例の本。この後いつもの場所で、それを読… アナログなロマンス(3) の続きを読む