O ma Rosalia!
プロローグ
顔は与えなかった。
銀色の超合金の頭部には、視覚と温度センサーをかねた赤い目を1つだけ。
人間の、どんな繊細な動きにも対応できるようにと、限りなく人間に近く作ったアンドロイドであるのに、顔だけは機械以外の何物でもない。
人間の青年そっくりのアンドロイドにしようかとも思ったが、やめた。
そんなことをしたら、作っているそばからイライラして壊したくなる。
あいつの傍にいられるこいつが、羨ましくて、妬ましくて。
「別にいいだろ。
顔なんかなくてもよ。」
人工知能にデータを移植しながら、ルビーの色の視線をあげた。
あいつの好み、あいつのくせ、あいつの生活スタイル、あいつの…。
ありとあらゆるパーソナルデータを、事細かく設定した。
彼の知る限り、すべてのことを。
こいつは彼の記憶を持つ人形。
「くそっ!」
端末をのせたスチールの机を、硬く握った拳で叩く。
大量のデータを移す端末が、ウィンウィンと繰り返し単調なリズムを刻んでいた。